「五感で感じる茶道の世界」
厳しい寒さが和らぎ、雪解けが始まる頃。
今回は、五感で味わう茶道の魅力を紹介します。
視覚、触覚、味覚、嗅覚、そして聴覚――これらの感覚は、私たちに様々な情報をもたらし、日常生活を豊かにしてくれます。しかし、感覚は意識的に使わなければ育ちません。
私たちは煎茶道を通して自身の感性を磨くという稽古をしています。
それでは、お稽古の中で感じる五感について少しご紹介いたします。
茶道ではお茶を楽しむだけでなく、自然の中で五感を研ぎ澄ますということを大切にしています。
「視覚」や「触覚」で花や茶道具を楽しむこと、「味覚」でお茶や主菓子を味わうことは、一般的ですね。
では、「嗅覚」はどうでしょうか。お香や茶葉の香りなど匂いを楽しむために使いますね。
しかし、嗅覚は香りを楽しむだけではなく、私たちの記憶や思い出を蘇させる力もあるのです。
遠い昔の記憶が彷彿とすることもあるのではないでしょうか。
最後に、「聴覚」はどうでしょうか。実は、「音」も重要な役割を果たすのです。
お茶会をイメージしてみましょう。
大自然に囲まれてお点前が進められる中、耳を澄ませると――どこからか、フルートのような音が聞こえてきませんか。
それは“鳥のさえずり”かもしれません。季節によって変化する鳥の歌や、風の音、水のせせらぎ、人々の呼吸や足音など、様々な音が混ざり合い、まるで自然のオーケストラを聴いているかのような感覚になるでしょう。
例えば、和の自然界の音が西洋のクラシック音楽のように感じられ、和と洋が融合しているような不思議な体験のようにも感じます。
また、お煎茶の味わいと同様に、お点前さんによって音の音色も変わることでしょう。
他にも茶会のタイトルや菓子名、道具や掛け軸、亭主のことばからも聴覚を通して季節の移ろいや瞬間の美を感じたり想像力を膨らませることが出来るのです。
このように、「音」に注目することで、和の文化と西洋の文化が融合したような不思議な感覚に触れられます。
気温が暖かくなり、自然が活気づく春の季節、特に「聞こえる音」に注目してみてはいかがでしょうか。どんな音楽が聞こえてくるのか、それが茶道の新たな魅力を発見するきっかけになるかもしれません。
「和の文化」という枠組みに縛られるのではなく、和と洋が共存しているという見方も面白いものです。五感を通じて広がる美しい体験は、感性の幅を広げ、心に深い満足感をもたらすことでしょう。