日本の文化とバレンタイン
バレンタインの風習はヨーロッパが起源ということは皆さんご存じかと思います。
始まりについては諸説あるためここでは割愛しますが、バレンタインはキリスト教圏では恋人が愛を誓う祭日であり、男性が女性へ花束やメッセージカード、チョコレートを贈る文化となっています。
そんなバレンタインの文化が日本で定着され始めたのは、1970年後半のことです。
とある菓子屋店主が毎年2月に売り上げが下がる解決策として西洋のバレンタインに着目し、当時は文化的に男性が女性に贈り物をする習慣がなかったため、「女性が男性に愛のチョコレートを贈る日」というキャッチコピーにしたところ大流行したのが始まりとされています。
それが派生して、現在では男性が女性にバレンタインのお返しをする「ホワイトデー」、また同性同士で贈る「友チョコ」、日頃親しくしている人や職場の人に贈る「義理チョコ」など、ヨーロッパにはなかった文化が日本で誕生しました。
この日本独自の風習は、日本人が潜在的に持っている「おもいやりの心」が、ごく自然に育まれているように思います。
茶道と深い関係のある禅の世界には「喫茶去」と「菩提心」という禅語があります。
「喫茶去」とは、「難しいことは後で、とりあえずお茶でも一服おあがりください」という意です。
私たちは日々のお稽古で、お茶をおいしく丁寧に淹れるために鍛錬していますが、日本人に根付いた「喫茶去」の考えは「菩提心」からきているとも考えられます。
「菩提心」とは「他人を喜ばせてあげたい」という心の奥底にある慈悲の心によって成り立っており、その慈悲心で出されたお茶は、お茶本来の味わいだけでなく、淹れてくれた人の温かい気持ちや心遣いも一緒に味わうから美味しいのです。
話しを戻しますが、今日に伝わる日本様式のバレンタインやホワイトデーの文化は、西洋文化を取り入れながら日本独自に醸成されていきました。
「いつもお世話になっている方に喜んでもらいたい」
「頂いたから、なにかお返ししたい」
という日本人が昔から大切にしていた「菩提心」「おもいやりの心」の現れではないでしょうか。
世界中から日本人のおもてなしやおもいやりの精神は高く評されていますが、古来より心を形として伝えていく茶文化の影響も大きいと思われます。
皆さまも、バレンタインに限らず、お手紙や頂き物などがあったときは、品物だけではなく送り主の気持ち(菩提心)にまで思いを馳せてみてください。
きっと幸せを感じられますよ。