誰もが足を止め、聞きたくなる水琴窟について
もともと日本の庭園は古墳の技術を生かし、池を掘り石を積み上げ、そこに力強い自然を表現することで自然崇拝を表し、神様の拠り所としてお祀りしていました。
飛鳥時代には朝鮮から初めて庭園技法が伝えられ、建物の様式の変化や思想の変化によるもの、流行、宗教の影響など、中国からの影響も色濃く受け発展してきました。
平安時代には寝殿造り庭園、鎌倉時代には自然観を砂や石だけで表す枯山水や池を中心とした回遊式庭園などもつくられてきました。
そういった中で日本独自の庭園文化も生まれました。寺院の「枯山水庭」、「白砂青松庭」、「苔庭」、「池庭」なども足を進めるたび広がる閑雅な風情は、私たちの心を落ち着かせ静かに癒してくれます。日本庭園は左右非対称で曲線の池が多いのですが、西洋の庭園などは平面幾何学的庭園というように左右対称の景観で幾何学的なものが多く、池も石を積み上げ大きな噴水などを用い、形も直線的で角ばったものが多くなります。
これは自然観の違いが庭園造りにも反映されているようで日本で大切にされている自然観、いわゆる極力自然に敬意を祓い、その姿のままに木や草花、苔、石、そして空間までも愛でることを大切にしています。池に注ぐ遣水(水路)を曲線につくり、その水流の音や風情も楽しむ、水を無駄にせず食物に与えることもできます。曲線の大きな池の中に島を造り蓬莱山を表すなどは秦・漢代に伝わり、現代でも広く好まれています。
一方西洋の庭園づくりを見ると王族などの人々が住まう建物を中心に左右対称につくられ、幾何学的に分けられたスペースに色ごとの花を密集させています。また彫刻された石像や噴水を用いることで人々が自然を支配しているようにも思えます。
日本庭園にある「水琴窟」とは?
なかでも日本庭園にある「水琴窟」ではあの心に染み入るような澄んだ音色に誰もが時を忘れ、かすかな水声に耳を澄まし、いつまでも聞いていたい。そんな心境になるものです。
この「水琴窟」は日本独自の文化であり、日本庭園文化の最高技法のひとつとされています。「水琴窟」は手水鉢の地中に作り出した空洞の中に水瓶などを伏せて埋め、水滴を落下させ反響させることで、琴に似た音を響かせることができます。その音色からこの名前がついたといわれています。
「水琴窟」の音は周波数で言うところの自然界のそれと同じで、川のせせらぎ・鳥のさえずり・虫の声・そよ風に揺れる葉の音など、いわゆる1/Fゆらぎという心地よいリズムで、私たちに聴覚から安らぐ気持ちを与えてくれるのです。
煎茶道の点前の中でも湯をこぼす音や茶をすすぐ音も同じく1/Fゆらぎ効果があることで、茶室ではいつになくリラックスできるという方も多くいらっしゃいます。
また、日本庭園によくある詫び寂びや引き算の美・左右非対称に空間の美・余韻の感性などを合わせ持ち、流れ出た水の音よりも水滴と水滴の「間」を聞き、余韻を楽しみ、音を追って耳をそばだて、静寂の中に心を無にすることで古人たちは癒されてきたのではないでしょうか。
このように水琴窟の琴のような水声は癒しの力を持っているようです。素敵な日本の文化ですよね。
(京都にある水琴窟の一例です)
名前 | ホームページ |
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宝泉院 | http://www.hosenin.net/ |
永観堂 | http://www.eikando.or.jp/ |
泉涌寺 雲龍院 | http://www.unryuin.jp/ |
正法寺 | http://www.kyoto-shoboji.com/ |
西寿寺 | http://saijuji.jp/ |
善峯寺 | http://www.yoshiminedera.com/ |
清水寺 成就院 | https://www.kiyomizudera.or.jp/ |