3分解説!畳のへりを踏んではいけない理由について
「へり」を踏んではいけない理由、知ってますか?
「畳のへり」と聞いても、すぐに浮かばない若い世代も増えてきたと思います。
一昔前は「畳のへりは踏まないように!」とよく言われました。今ではテレビで作法検定のような番組の和室の入り方などで芸能人の方がその道の先生に注意されるシーンを思い出すのではないでしょうか。
今回はそんな「畳のへり」について簡単にご説明させていただきます。
「畳のへり」についての基礎知識!
そもそもへりとは漢字で「縁」と書きます。「縁」は「へり・ふち・えん」とも呼ばれます。
畳の縁(ふち)のまわりに、縁(へり)をつけることで畳を次々と網目のように繋ぎ合わせる縁(えん)の役割があります。また、隣り合う畳のいぐさ同士が擦れ合い傷んでしまうのをへりによって防いでいます。
それでは、なぜへりを踏むことがタブーとされているのでしょうか?以下に3つの理由をご紹介します。
1 権威の象徴
百人一首の絵からもわかるように昔の貴族や殿様が用いた畳縁は金糸や銀糸で織られた豪華なもので家紋などが入っているものもありました。身分によって畳の縁の違いがあり、縁を軽々しく踏むことは権威の象徴を踏みにじる行為とも考えられました。
2 染物の縁
縁には様々な模様や染物があり、植物などの草木染で作られたものもあります。もちろん、染物の縁を意識せずに踏んで歩くとすぐに色が薄くなったり縁が傷んでしまうので踏まないようにとの心配りでもあります。
3 段差に注意
現代ではこの理由が一番理にかなっているのかもしれませんが、縁は畳の表面よりも少し分厚くなります。豪華な糸を使った織物の縁は現代の者よりも段差があり、躓いてしまいます。子供が幼いころから縁を踏まないように注意することは、子供が転ばないためでもあり、大切な躾でもありました。
4 そのほかにも
他にも昔、忍びの者が刀を突きあげるときには畳の間の縁を狙うからとされたり、茶席で懐紙がない時に縁に菓子を置いたという話もあります。
茶道のお稽古は着物?
小笠原流煎茶道の稽古では1枚の畳を六歩で歩きます。これも着物姿で美しく振る舞えるように、そしてもちろん、へりを意識して踏まないようにとの心掛けから守られているものです。
末広(扇子)で挨拶するときも縁から畳目二目下がったところに末広を置きます。毛氈を敷く場合も縁から十六目下ったところから敷きます。
他人との境界線である縁から謙遜の意味で下がることで、縁下ることとは遜(へりくだ)ることと同意になります。
*遜る・謙る=ゆずる・ひかえめ・他の人を優先する=気おくれして小さく見立てることから、謙遜・相手を敬って控えめな態度で振る舞うこととされます。
このように和室では畳の縁の意義を大切に守り、作法がつくられています。すべてが相手を思いやる気持ちの表れであり、そこには人と人との心を結ぶご縁のありがたさに繋がるのですね。